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サマリー
首こりの原因とは何だろう?
首のコリはほとんどの方が経験したことがある症状ではないでしょうか。かくいう私も10代の頃から首こりには悩まされ、特に首こりに起因する頭痛と吐き気には長年苦しんだものです。
それでは首こりを作る原因とは何でしょうか?以下のようなものがあります。
■腕の筋膜の捻じれ
まずは日常的に誰でも起こり得る首こりの原因の一つとして「腕の筋膜の捻じれ」があります。
解剖学的に腕は【前腕(ぜんわん)】と【上腕(じょうわん)】に分類されます。上腕は上腕骨、前腕は橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という二本の骨によって構成されており、そのため前腕は手のひらを上に向けたり下に向けたりと捻る運動が可能になっているわけです。
パソコンやスマホの操作など、現代人は手のひらを地面の方向へ向けて捻っている(※これを解剖学では”回内(かいない)”と言います)ことが多いため、前腕の筋膜にねじれが発生し、その捻じれが首にまで波及してしまうのです。
余談ですが寝違えの時なども前腕の筋膜の捻じれが原因の一つになっていることがあります。その場合には前腕の骨の位置関係を安定させてあげると首の動きがスムーズになったりします。
皆さんに不思議がられますが、腕と首は相互に関係があるのです。余談ですが、腕の支配神経も首から出ており、これを【腕神経叢(わんしんけいそう)】と言います。
■噛みしめ・歯ぎしり
噛みしめや歯ぎしりといった顎関節(アゴの関節)の問題も首こりに関係があります。
噛みしめや歯ぎしりなどの癖は身体の前面(首・胸・腹)にある筋膜に癒着を起こす原因になると言われています。胸やお腹など身体の前面の筋膜に癒着が起こると背中側が引っ張られて猫背の状態になります。
この猫背姿勢が長時間、あるいは習慣的に続くと頭部を支えている後頭下筋(こうとうかきん)という筋肉に非常に負担がかかるのです。
また、アゴを動かす筋肉を支配しているのは三叉神経(さんさしんけい)という神経です。三叉神経はその名の通り三つまたの神経であり、眼神経・上顎神経・下顎神経という3つの神経に枝分かれします。
歯ぎしりや噛みしめによってアゴの関節や筋肉に負担がかかってくるとこれらの中の特に下顎神経(かがくしんけい)という神経の支配領域にコリや神経痛が出てきます。
下顎神経は主に側頭部や顔面の一部の感覚と運動を支配していますが、放散痛(ほうさんつう)と言って側頭部のコリや痛みが首(後頭下筋)に伝わってしまうこともあるのです。
■目の疲れ
目の疲れは肩こりの原因として有名ですが、首こりの原因でもあります。それは上述の三叉神経(の中の眼神経)が関与しています。
眼神経(がんしんけい)は目の周辺の感覚をつかさどっている神経ですが、眼精疲労が原因でここに神経痛が起こってくると神経の走行上の問題から首まで神経痛が伝わってしまうと言われています。
首こりや首痛の原因の一つに後頭神経(こうとうしんけい)の神経痛がありますが、眼神経の疲労と神経痛は【大後頭神経・三叉神経複合体】という経路を通じて目→後頭部→首へと伝わってしまうのです。
■首の関節的なダメージや筋肉の異常収縮
当院の顧客様にもよくご質問頂くのですが、皆さんの首には「これ骨!?」っていうくらいのゴリゴリがあったりしないでしょうか?
それはもしかしたら筋肉の異常収縮が起こっている部位かもしれません。
筋肉の異常収縮とは読んで字のごとく【筋肉の異常な収縮】(=脳の命令に反して筋肉が勝手に縮こまって硬くなってしまっている状態)のことです。これは主にスポーツや交通事故などによる外力によって筋肉の繊維に損傷が発生した結果、起こります(いわゆる”むち打ち”)。
メカニズムを簡単にご説明すると筋肉の繊維を構成している細胞に「イオンチャンネル」というゲートがあり、そこへカルシウムやマグネシウムといった化学物質(電解質)が出入りしています。このイオンチャンネルに電解質が出入りすることで化学反応が起こり、筋肉の収縮が起こるのです。
しかしながら筋肉の損傷が原因でこの化学反応がうまくいかなくなると、ゆるむことなく「縮め!縮め!」という化学反応が一方的に起こってしまうことがあります。これが筋肉の異常収縮の原因なのです。
首こりはどんな症状をもたらすか?
首こりは首周辺の筋肉や関節の痛みのみならず、頭痛や吐き気、手のしびれなどの症状の原因にもなります。
首は身体が脳へとつながる唯一の連絡通路であり、その構造も特別なものになっています。例えば首の大切な動脈のひとつに【椎骨動脈(ついこつどうみゃく)】という血管があります。この椎骨動脈は横突孔(おうとつこう)と呼ばれる頚椎(首の骨)の隙間を通過しており、まるで首の骨に守られるように配線されているのが特徴です。
この椎骨動脈は脳底動脈(のうていどうみゃく)と呼ばれる非常に重要な脳血管に連絡しており、首こりが原因で頚椎に問題が起こってくるとこの大切な椎骨動脈が圧迫を受け、頭痛などの原因になってきます。
また、首の前面からは腕神経叢(わんしんけいそう)という腕の神経の束が出ています。この腕神経叢は斜角筋隙(しゃかくきんげき)と呼ばれる首の筋肉の隙間から配線が出ているため、首こりなどが原因で首の筋肉・関節に問題が起こってくると圧迫を受け、腕のしびれなどの原因になるのです。
他にも首こりが起こっていると呼吸が浅くなったり、自律神経の不調が起こったりとまさに
”万病の元”になるのです。
首こりの症状を改善するには?
首がこっている時、つい首を重点的にほぐしてしまいたくなりますが、上述のように首こりの原因は首単体でないことが多いです。
首そのものにアプローチしてあげることももちろん大事ですが、何が首の痛みや不調の原因になっているかを特定し、対処するほうが実は首ばかりにアプローチするよりも有効だったりします。
具体的には側頭部やアゴのまわりを弛めてあげること、手のひらや腕のコリをほぐしてあげること、大胸筋や腹筋をほぐすことで背中の引っ張られをゆるめること、目の使い過ぎ、猫背などの不良姿勢を長時間繰り返さないことなどがあげれるでしょう。
余談ですが、実は「首は10分以上マッサージすべきでない」と業界的には言われています。首はすべての不調の改善につながる可能性を秘めた部位ではありますが、非常にデリケートな部位でもあることを知り、それなりに慎重に対処するのがベターです。
考えるのがめんどくさいという人は専門家の施術に頼るのも手だと思います。