今回は下位交差性症候群(あるいは下部交差性症候群)についてご紹介させて頂きます。
下位交差性症候群(Lower Cross Syndrome)とは何だろう?
下位交差性症候群とは反り腰が原因で骨盤周辺の筋肉(筋力)のバランスが崩れてしまい姿勢をうまく支えることが出来ず腰痛や脚の不調の原因となっている状態のことです。
この筋肉のアンバランスは①筋緊張と②筋の弱体化が人体の中で出現することによって起こり、緊張して硬くなった筋肉と筋力が弱体化した筋肉が混在した状態になっているためにバランスが崩れているのです(このような筋力の不均衡状態をマッスル・インバランスと言ったりもします)。
このアンバランス状態が骨盤を中心に交差上に発生することから下位交差症候群と呼ばれています。
図の”ジグザグ線”の部位が【①常に緊張して硬結している筋肉】、”↔”を記入している部位が【②常に引き延ばされていることで弱っている筋肉】です。
この①と②は表裏の関係があり、ラインで結ぶとこのように”交差”しているのがお判りいただけるかと思います。
また、この下位交差性症候群はしばしば上位交差性症候群(=猫背姿勢)と併発することがあります。
上位交差性症候群と下位交差性症候群が併発すると【猫背+反り腰】によって全身のバランスが大きく崩れて筋肉や関節に負担がかかり、より複雑で強い症状を引き起こすことがあるのです。
【過去記事】上位交差性症候群について
下位交差性症候群になりやすい姿勢とは?
非常にわかりづらい例えかもしれませんが、私はネイサン・ロスチャイルドの肖像が脳裏に浮かびました(笑)
お腹が出ていて腰が反っており、脚をピンと伸ばしてバランスをとっている姿勢なのですが、上述のネイサン・ロスチャイルドについてご興味がある方は是非お調べになってみて下さい(シルクハットをかぶったモーニングコートの男性を横から見た肖像です)。
この下位交差性症候群は腹筋と股関節周りの筋肉(殿筋群)、大腿後面の筋肉(ハムストリングス)の弱体化によって起こりますが、特に股関節周りの筋肉(主に中殿筋)の筋力が低下すると骨盤が不安定になり股関節のマルアライメントを引き起こすと言われています。
股関節に問題が起こると膝や足首にも問題が出てくるため、余計に痛みやコリを感じるようになるのです。
セルフケア方法について
上述の通り下位交差性症候群では反り腰の姿勢が原因で緊張する筋肉と弱体化する筋肉が一定の法則を以って出現してきます。
●緊張している筋肉:腰の筋肉と大腿(太もも)の前面の筋肉
●筋力が弱体化している筋肉:腹筋と大腿後面の筋肉
ケアの方法としては緊張して硬くなっている部分はリラクセーションやストレッチすることで弛め、弱っている部分は筋力強化(トレーニング)で鍛えることで筋の不均衡状態が是正されてくると言われています。
施術においては主に硬くなった筋肉にアプローチすることが有効ですが、相対的に弱体化してしまった筋肉については筋力が回復するのにしばらく時間がかかります。リハビリや筋トレ的なイメージでケアされるのが良いでしょう。
筋トレが先?それともストレッチ?
下位交差性症候群は緊張した筋肉を弛めることと弱体化した筋力を回復させることがアプローチとしては有効ですが、【筋肉を弛める】ことと【筋力強化】のどちらが優先順位が高いのでしょうか?
結論は【筋肉を弛める】ことを優先したほうが良いと言われています。
緊張した筋肉は弱体化した筋肉(拮抗筋(※))の働きを制限してしまうため、筋力強化の前にまず緊張している筋肉を弛めてあげないとせっかくのトレーニングの価値が半減してしまうのです。
(※ある筋肉が運動する際にその筋肉とは反対の動きをする筋肉のこと。関節を曲げる働きをする屈筋と、関節を伸ばす働きをする伸筋など)
下位交差性症候群で影響を受ける筋肉
このように下位交差性症候群は不良姿勢が原因で筋の不均衡を起こし、緊張する筋肉と弱体化する筋肉が出現します。
具体的な筋肉の名称は以下の通りです。
●緊張する筋肉 → 弛めてあげるべき筋肉
①脊柱起立筋
②大腰筋・腸骨筋
③腰方形筋
④大腿直筋
⑤大腿筋膜張筋
⑥縫工筋
⑦多裂筋
●弱体化する筋肉 → 筋力強化すべき筋肉
①腹直筋
②内・外腹斜筋
③中殿筋
④小殿筋
⑤ハムストリングス
最後に
今回は下位交差性症候群についてご紹介させて頂きましたがいかがでしたでしょうか。
慢性的な姿勢の不良からくる問題は現代人のほとんどが持っていると言われていますが、不良姿勢が慣習的に長期にわたって続くと筋力のバランスまでおかしくなってしまい、それが原因でコリや痛みが引き起こされるのです。
もしあなたの腰痛や脚の不調がいつまで経っても良くならない場合には筋力のアンバランスが起こっている可能性を疑うと解決のヒントがあるかもしれません。