【最新】筋膜の癒着が起こる理由

最近、TV番組でも話題の【筋膜】ですが、この筋膜に最も発生する問題が【癒着(ゆちゃく)】です。

しかし【筋膜の癒着】とは一体どんなものなのでしょうか?ご紹介させて頂きます。

筋膜の癒着が起こる原因

 

筋膜の癒着は『長時間、偏った姿勢で身体に一方的な圧力がかかった場合』に特に起こりやすいと言われています。

 

具体的に言うと「寝転がってTVを鑑賞する」とか「猫背で長時間のスマホ操作」などが典型例といえます。

こうした姿勢の偏りが筋膜の癒着の原因となっていくわけですが身体の中ではどんなことが起こっているのでしょうか?

筋膜が癒着を起こすメカニズム

 

【癒着】というと「手術や外傷の結果、本来繋がりを持っていない組織がくっ付き合って不適切に治癒してしまった状態」をイメージされる方が多いのではないでしょうか?

しかし、筋膜に起こる癒着はまた異なる性質を持っている上にいくつかの種類があります。一つ一つご紹介していきましょう。

 

タイプⅠ:筋上膜と筋肉との間に起こる癒着

筋上膜(きんじょうまく)とは筋肉の繊維を包み込んでいる膜のことを言います。例えば鶏肉を解体すると筋肉が薄い膜に包まれているのが観察できますが、それが筋上膜です。

 

皮膚から筋肉の間にはいくつかの層があり、ざっくりいうと【皮膚(表皮)→脂肪層→筋上膜→筋肉→骨】という構造になっています。タイプⅠの癒着はこの筋上膜と筋肉がくっ付き合って起こります。こうなると本来は筋上膜の下を滑走しなければならない筋肉がうまく滑走しなくなります。

そうなると筋肉が運動を起こすたびに脂肪層にある感覚受容器や神経が刺激され、痛みを伴うようになるのです。

なお、この筋上膜自体はそんなに悪さをしないと言われています。昔は筋肉のバランスを悪くしたり、身体を歪めるという説がありましたが解剖学的に筋上膜はほとんど無く(薄い)身体全体の機能を悪化させるほどの力はないと考えられています。

タイプⅡ:表在筋膜で発生する癒着

表在筋膜とは結合組織とも呼ばれ、皮膚と筋肉の間に存在しています。

この部分が特に癒着が強くなる部位と言われており、筋上膜と比較すると結合組織はものすごい量が存在しているため、ここで癒着が発生すると身体に及ぼす影響も大きくなります。

表在筋膜と筋上膜がくっ付き合うと筋上膜の下にある筋肉とも圧着されてしまい、筋肉の滑走が失われてしまいます。結果として痛みや関節可動域の低下が起こるのです。

 

タイプⅢ:皮膚と結合組織の間で発生する癒着

皮膚(表皮)と結合組織の間でも癒着は起こります。筋肉へのアプローチで激痛を訴える方などはけっこう皮膚と結合組織の間の癒着が悪さをしている可能性があります。

このタイプの癒着を持っている人はどうも自律神経の不調を抱えている方やストレスが身体の症状に出やすい方が多いように感じられます。

皮膚にアプローチすると時に意外なほど身体の状態が変化することがあり、「いろいろ試したけど良くならない」という人は試す価値があるポイントと言えます。

そもそも【癒着】って具体的に何が起きているの?

 

筋膜の滑走はヒアルロン酸が潤滑油の役割を果たしています。

このヒアルロン酸が疲労やオーバーユース、不良姿勢、運動不足などが原因で脱水状態になると、ドロドロと粘りのある状態になり筋膜の滑走性が低下します。このようにヒアルロン酸の変質が【癒着】をもたらすのです。

痛みやコリを感知するポリモーダル受容器は筋膜に多く存在しているため筋膜の癒着がコリや痛みを引き起こすことが最新の研究で明らかになっています。

また、滑走性が低下することでドロドロ状態になったヒアルロン酸がこり固まってくると筋膜を構成するコラーゲンやエラスチンの密度が高くなり繊維がグチャグチャと渋滞したような状態(結合組織の塊)になります。

 

このような状態になると筋膜の硬化が起こってきて弾力や伸縮性が失われてしまうのです。ひどい肩こりの人などにゴリゴリに硬くなって筋肉の塊のようなものが形成されている人がいますが、その硬くなっている部分こそが結合組織が凝集したものなのです。

 

筋肉は感覚受容器が少ないが筋膜には非常に多くの感覚受容器が存在しています。筋肉痛や揉み返しは筋膜の修復過程で起こる細胞増殖で起こる癒着によって発生している痛みと言われています。

 

肩こりがひどい人で【肩ばかり強めのマッサージを受け続けている人】の肩は筋肉が太くなっているのではなく、結合組織が集まって「結合組織の塊」になっているだけです。こういった部位は徐々に無感覚になり、どんどん強烈な刺激・マッサージを求めるという悪循環に陥る危険性があるのです。

 

施術によって何が起こっているのか?

 

筋膜整体のテクニックは【皮膚⇔結合組織⇔筋肉】3つの層を分離して、最終的に結合組織の下にある筋肉がきちんと機能するようにしています。

 

 

テクニックではこの3つの層を手技で【圧着】し、外力を加えることで人工的に滑走を蘇らせていきます。一度【圧着】することで圧を開放した時に組織の間にある空間が復元され、癒着が取れるのです。

筋肉がうまく滑走するようになると血行が改善されるため血液から供給される水分によってドロドロだったヒアルロン酸がサラサラの潤滑油の状態に戻ります。

ヒアルロン酸がサラサラになって筋肉が正常に動くようになるとコラーゲン線維(あるいは結合組織)の凝集が解消され、筋肉は弾力を取り戻します。

癒着をとればいいってもんじゃない!

 

上述のように解消したい筋膜の癒着ですが、実はやたら筋膜の癒着をとってしまうと返って身体がバランスを失うリスクがあります。

 

 

絶対ではありませんが人体にはある程度、不調が形成されてくる特定のパタン(あるいはプロセス)が存在しています。ようはある一定の法則性をもって調子が悪くなってくるのです。

この法則性に則ってアプローチしないと【本来はその人には必要のない外力】を加えることになり、良くならないばかりか返って痛みが出るなど悪影響が出ることすらあります。

具体例を出すと「脚の外側が痛い」といって来談される高齢者の方に脚の外側へのアプローチを行ってしまうとバランスが崩れて立てなくなる(あるいは返って痛みが出る)可能性があります。

高齢者の足の外側の痛みの多くは脚の内側の筋肉の弱体化が原因です。つまり外側でバランスをとろうとした結果、外側が痛くなっているわけです。なので筋力のアンバランスを無視して訴え通りに脚の外側へアプローチしてしまうと支えを失い崩れてしまうのです。

また、筋膜に反応強い反応が出る人の大半はアレルギー症や自律神経の問題を持っている人が大半です。このような人は筋肉や関節へのアプローチではあまりよい反応が出ないことが多いです。

 

最後に

 

現代は非常に筋膜に問題が起こりやすい時代と言えます。

私自身、施術家として十数年この業界に身を置かせて頂いておりますが、私見ながら2015年くらいを境にご来院下さる顧客様の体質が変容してきているのを肌で感じてきました。

恐らくスマホやタブレット端末の普及にともなって日本人の大多数の生活習慣が変貌したことが一因と考えております。

筋膜を専門とさせて頂いている手前、このようなことを申すのも矛盾しているようですが「筋膜だけを見ていてもダメ」で「姿勢」や「関節可動域」であったり「生活習慣」「癖」にも着目しないと結果はなかなか出ません。

かたや、筋膜(あるいは身体の表層)は一番最初に問題が起こってくるレイヤー(階層)であることは間違えなく、そこをすっ飛ばして奥の筋肉や関節にのみアプローチしても現代人の身体はなかなか立ち直っていかないのも事実です。

もしもあなたが色々な施術を試してみたけどなかなか良くならない場合にはぜひ「筋膜」に着目してみて下さい。