噛み締め・歯ぎしり癖と頭痛の関係

現代人の不調の原因として一際多いのが【かみしめ、歯ぎしり癖】のように私は感じています。

今回は特に頭痛との関係性をテーマに噛み締めの悪影響についてご紹介していきたいと思います。

噛み締め・歯ぎしり癖とは何だろう?

噛み締めや歯ぎしりのことを歯科学では【ブラキシズム】と呼びます。これは無意識に歯を食いしばっていたり上下の歯を擦り合わせてしまう異常な癖のことです。

 

このブラキシズムは起きているときと寝ているときにそれぞれ起こり、起きているときのものを【覚醒時ブラキシズム】、寝ているときのものを【睡眠時ブラキシズム】と言います。

 

ブラキシズムの原因は精神ストレスやアルコールの摂取、いびきや睡眠時無呼吸症候群が原因になることが調査によって判明しており、特に睡眠時無呼吸症の人がブラキシズムを起こす確率が高いことがわかっています。

 

他にも類似するものとして【上下歯列接触癖(TCH)】というものもあります。これは上下の歯を接触させている時間(正常であれば1日20分程度)が長かったり、上下の歯を擦り合わせてしまう癖のことで、顎関節症の原因の多くがTCHだったという調査結果も出ています。

 

噛み締め・歯ぎしりの影響とは?

噛み締めや歯ぎしり癖は単純に歯やアゴのトラブルの原因になるだけではなく

●肩こり
●首こり
●頭痛
●腰痛
●寝違えやぎっくり腰
●自律神経失調症
睡眠事務呼吸症
●日中の異常な眠気
●体がだるく疲れが取れない
●四十肩・五十肩
e.t.c・・・

などなど、さまざまな不調の原因になります。

 

それではなぜここまで様々な不調をもたらす原因となるのでしょうか?それは覚醒時にせよ睡眠時にせよ噛み締めをしていると呼吸が乱れる(浅くなるか停止する)ため睡眠の質を落としたり、自律神経に異常を起こさせる原因になるからです。

 

自律神経に異常が起こってくると筋肉・関節・内臓など人体の働きがおかしくなってきます。自律神経の異常は「その人の弱いところ」に出てきやすいと言われていますのでまさに”万病のもと”なのです。

 

また、噛み締めは顎関節に負担をかけたり、アゴを動かしている筋肉(そしゃく筋と言います)の痛みや硬結の原因となります。アゴ周りや頭部の筋肉に硬結が起こってくると神経痛の原因となり、この神経痛が肩や首に広がると首肩のコリや頭痛になるのです。

噛み締めと頭痛の関係

このように万病のもととなりかねない噛み締めですが、頭痛とはどのように関係するのでしょうか?

私は経験上、以下のような因果関係があるように感じています。

 

①頭部の筋肉の硬結の原因となるため頭蓋骨内の内圧が分散・調整されなくなるため

ちょっと難しい話になりますが人間の頭蓋骨には【縫合線(ほうごうせん)】と呼ばれるヒビがいくつかあります。この縫合線は出生児にはくっついておらず乳児の体と脳の発育に伴って徐々に閉じていきます。

 

解剖学の教科書的にはこの縫合線は成長に伴って癒合(くっついてしまう)すると記述されているのですが、可動性を持っているとする専門家も多くいて、縫合線が可動することで頭蓋内の内圧を分散・調整する働きをしていると考えられています。

 

縫合線の可動性の真偽については否定する方もいますが、私も縫合線には若干の可動性があるのではと感じています。例えばですが呼吸をするときに側頭部に触れていると特に鼻で息を吸い込んだときに頭蓋骨が膨らんでいくのが感じ取れます。呼吸の効率をよくするために吸気の際に頭蓋骨を膨らませる動きがあるのでしょう。

アゴを動かす筋肉の中でもっとも大きな筋肉に【側頭筋】という筋肉がありますが、噛み締め・歯ぎしり癖のある人はここがひどくこって硬くなっています(耳の上あたりに筋の段差がある方は要注意)。また頭頂部には側頭筋に隣接するように帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)という筋膜があり、この筋膜は顔面から頭部を覆ってい前頭筋・側頭筋・後頭筋をそれぞれ繋いでいます。

 

そのため側頭筋に筋膜的な癒着などの異常が起こると隣接している帽状腱膜を経由して前頭筋や後頭筋にもストレスがかかり連鎖的に頭を締め付けるような現象が起こってきます。こうなると縫合線がうまく緩めなくなり頭痛の原因になる可能性があります。

 

②そしゃく筋の過緊張が神経痛の原因となるため

アゴの関節を動かす筋肉の代表的なものは【咬筋】【側頭筋】【外側翼突筋】【内側翼突筋】の4つでこれらを総じて咀嚼筋(そしゃくきん)と呼びます。

噛み締め癖が原因でそしゃく筋が強く緊張してくると側頭部の痛みや顎関節の痛みの原因になり、それがひどくなってくると頭痛(側頭部痛)に発展することがあります。

③そしゃく筋の支配神経に起こった緊張や神経痛の影響が隣接した他の領域にも影響を及ぼすため

そしゃく筋群は下顎神経(かがくしんけい)という神経によって支配されているのですが、この下顎神経は三叉神経(さんさしんけい)という神経の一部です。

 

三叉神経は他にも【眼神経(がんしんけい)】【上顎神経(じょうがくしんけい)】という枝に分かれているのですが、それぞれが上顎の周辺や目の周りを支配しています。

 

これは私の仮説ですが下顎神経の支配領域に問題が発生すると上顎神経や眼神経の領域にも問題が波及するのではと考えています。こと筋膜においては「ある領域に問題が起こると隣接している他の領域にも悪影響が及ぶ」ことが臨床的にはしばしば観察されます。

 

よく目の疲れが肩こりや頭痛の原因となると言われますが、これは目の周りを支配している眼神経が後頭部痛の原因になる後頭神経という神経と大後頭神経・三叉神経複合体】というつながりを持っているためです。眼精疲労による神経の緊張・興奮が後頭神経を経て肩首に広がるのですね。

また後頭部から首にかけては僧帽筋(そうぼうきん)という巨大な筋肉が存在するのですが、この僧帽筋は脳神経(副神経)によって直接支配されているためにストレスに反応しやすいと言われています。

③噛み締めは体の前面にある筋膜の癒着の原因となり頭部のバランスが崩れて首に負担がかかるため。

頭部の重量は成人で4〜6kg(体重の10%ほど)あり、うつむくだけで首にかかる負担はその数倍になると言われています。

 

噛み締め癖がある人は体の前面にある筋膜に癒着が起こりやすく、首の前面に筋膜の癒着が起こると頭部のバランスが前方に崩れ頭を支える肩首の負担を増加させてしまうのです。結果として肩首周辺の筋肉の強い緊張が起こってくると筋緊張性頭痛の原因となります。

また、頭部のバランスが崩れると猫背の前傾姿勢という全身の体の歪みの原因となるため頭痛のみならず背中痛や腰痛などの不調にもつながってくるので注意が必要です。

④慢性的な噛み締め癖は呼吸に悪影響を与えるため呼吸が浅くなり酸素不足になるため。

上述の通り噛み締め癖は体の前面にある筋膜の癒着を亢進させてしまう原因になります。

 

体の前面には腹筋をはじめとした肋骨に付着している筋肉が多数存在するため、それらに癒着が起こって動きが悪くなってくると肋骨の動きまでおかしくなって呼吸が浅くなります。慢性的に呼吸が浅くなると体が酸素不足になってくるため体に炎症が起こりやすくなります。

 

体の中で酸素は赤血球が持っている「ヘモグロビン」という物質と結合することで運搬されています。すなわち酸素は赤血球(血液)によって運ばれてくるため酸素不足になると人体は炎症を起こすことで組織に血液を集めようとするのです。

 

炎症は炎症起因物質と呼ばれる物質が放出されて血管が拡張することで起こるのですが、放出された炎症起因物質は血管周辺の神経まで刺激してしまいます。それが頭蓋内の血管で起こるといわゆる片頭痛の原因になります。

 

酸素不足による頭痛の中で近年問題になっているのが「マスク頭痛」です。2019年に始まったコロナショックによってマスクの着用が日常化しましたが、マスクを常時着用することで酸欠になり頭痛の原因を作ってしまうというものです。

また、マスクをしていると自分が吐いた息を再び吸う割合が多くなるため二酸化炭素過多になりやすくなります。二酸化炭素は頭蓋内の血管を拡張させやすい科学的因子のため片頭痛の原因になると言われています。

 

最後に

今回は噛み締め癖と頭痛の関係についてご紹介させて頂きましたがいかがでしたでしょうか。

 

ストレスと噛み締めの関係性が確認される研究などもあり、噛み締めや噛み締めが原因で起こる不調はまさに現代病といって過言ではありません。

 

頭痛のみならず、もしあなたがなかなか良くならないお体の不調に悩まれているのであればそれは噛み締め癖が原因かもしれません。