今回は【すねの外側(下腿外側)が痛い】場合にどのような原因が考えられるか。そしてどのように施術するかについてご紹介させて頂きます。
詳しくは動画かサマリーをご覧ください!
サマリー
●すね(下腿)の外側には長腓骨筋(ちょうひこつきん)や前脛骨筋(ぜんけいこつきん)などの筋肉が存在しておりそこが痛むケースがある。
●全身のバランスが崩れてくると脚の外側に加重がかかり、結果としてすねの外側が痛むことがある。
●すねの外側の痛みは太ももの外側の張り・痛みと関連がある
●股関節-膝-足首はそれぞれ動きを補い合う関係にあるため、すねの外側の痛みをケアする上で重要な指針となる。
●すねの外側の筋膜の癒着は【噛みしめ】と関係がある。
●【噛みしめ】は身体全体のバランスを崩す原因となる。
●坐骨神経の圧迫もすねの外側の痛みの原因になる。
●よってすねの外側だけアプローチしても結果が出づらい。
すねの外側が痛い原因とは何だろう?
すねの外側(以下、下腿外側)には長腓骨筋(ちょうひこつきん)や前脛骨筋(ぜんけいこつきん)などの筋肉があり、ここが緊張したり筋膜の癒着を起こすと【下腿(すね)の外側の痛み】を感じるようになります。
下腿は腓骨(ひこつ)と脛骨(けいこつ)という二本の骨によって構成されており、それぞれ内側の太い骨の【脛骨】、外側の細い骨の【腓骨】という位置関係になっています。
下腿のように二本の骨によって構成されている部位として前腕がありますが、どちらにも共通して言えることが【ねじる運動(回旋運動)が出来る】ということです。
前腕も下腿も【骨間膜(こつかんまく)】という筋膜で骨同士が強力に連結されています(すねの場合には【下腿骨間膜】と呼称します)。この骨間膜はまるで織物の織り目が交差するように網目状になった筋膜で、この骨間膜に筋膜的なよじれが発生すると脛骨と腓骨の連動がおかしくなったり、膝や足首の関節の動きに不良が出てきて下腿外側の痛みや不調の原因になるのです。
余談ですが、下腿外側の筋膜の癒着と【噛みしめ/歯ぎしり】は相関関係があると業界的に言われています。下腿外側の痛みがシンプルに下腿の骨や筋膜が原因でない場合には、他にはどのような原因があるのでしょうか?
なぜ噛みしめ/歯ぎしりが下腿外側の痛みの原因になるのか?
噛みしめや歯ぎしりなど顎関節(アゴの関節)の問題が下腿外側の痛みの原因になるなど、荒唐無稽な話に聞こえる方も多いと思います。
メカニズムについて簡単に説明させて頂くと、噛みしめや歯ぎしりをしている人は身体の前面の筋膜の癒着を作りやすいため、身体全体のバランスが崩れた結果、脚に負担がかかってくるというわけです。
噛みしめは特に内側広筋(ないそくこうきん)や内転筋といった【うちももの筋肉】に癒着を生じさせると言われています。内ももの筋膜の癒着は歩行などの脚を振り出す動作を不安定にさせるため、結果として脚の運動のメイン動力である股関節の動きがうまくいかず、膝・足首の運動にも悪影響を与えてしまい痛みや不調の原因になります。
また、筋膜の癒着は他の関連した部位の筋膜にも影響するため【内もも→すねの内側→足の内側】と連鎖的に影響を及ぼしていきます。筋膜が癒着を起こすと筋肉にブレーキがかかったような状態になり、きちんと動かなくなります。脚の内側で筋膜の癒着が発生してくるとそれを補うために脚の外側に負担が増大してしまうというわけです。
うまく動いていないということは筋力の低下にもつながってくるため、上記のような不調が長期に続いた方、特にお年寄りは内ももの筋肉が衰えてしまい、代償的に脚の外側で体重や運動を支える形になります。
この状態を筋膜整体では【腓骨立ち】と呼んでいます。この腓骨立ちが発生している場合は内ももの筋力低下が背景にあるため、内ももの筋膜の癒着を丁寧にはがし、筋肉の働きを正常なものに戻すことで脚全体の筋力が甦ってこないと下腿外側の痛みの原因は無くなりません。
他にも下腿外側の痛みの原因になる部位があります。それはどんなものなのでしょうか?
腸脛靭帯と坐骨神経痛
上述の通り筋膜の癒着は他の関連した部位の筋膜にも影響を与えます。下腿外側の場合、特に影響を受けやすいのが太ももの外側にある【腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)】という筋肉です。
この腸脛靭帯は長距離ランナーの選手が痛みを訴える【腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)/ランナー膝】の原因筋として知られていますが、実は下腿外側に不調が起こると連動して問題が出てくる部位でもあるのです。
また、下腿外側に痛みを生じる原因のひとつに【坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)】があります。この坐骨神経の圧迫が起こると坐骨神経の延長である【総腓骨神経(そうひこつしんけい)】の働きに影響が出て痛みやしびれの原因になります。
総腓骨神経は下腿外側にある前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の支配神経でもあります。そのため坐骨神経が重症化すると【下垂足(かすいそく)】と呼ばれる前脛骨筋がうまく動作しない状態になってしまいます。
前脛骨筋は背屈と言って足を上方に動かす運動に関与しています。そのため前脛骨筋がうまく動作しなくなってしまうと足がうまく動かず、まるで足を引きずるような歩行になってしまうことから”下垂”足と呼ばれているのです。
股関節との関連性について
坐骨神経痛が下腿外側の痛みの原因になることは上述の通りですが、股関節を運動させている中殿筋(ちゅうでんきん)と小殿筋(しょうでんきん)という筋肉も脚の外側の痛みの原因筋です。
中殿筋と小殿筋は歩くときや走る時に骨盤が傾かないように安定させる働きを持っています。特に小殿筋が股関節の安定に深く関与しているおり、小殿筋に筋膜の癒着が発生すると股関節の運動の不調や坐骨神経痛の原因になります。
よって下腿外側の痛みについては腸脛靭帯のみならず小殿筋にもアプローチしておくと有効です。
あなたの痛みがいつまでもよくならないのであれば、それは根本からアプローチの仕方を見直す必要があるのかもしれません。