今回は「舌と耳鼻咽喉の関係は深いのですか。」とのご質問を頂きましたのでご返答かたがたご紹介させて頂こうと思います。
詳しくは動画かサマリーをご覧ください↓
サマリー
舌=直筋系の終末
耳鼻咽喉(あるいは呼吸器系)と舌との関連を説明する上でお話ししなければならないのが身体の前面に配されている【直筋(ちょっきん)】の存在です。
いささか見づらいイラストで申し訳ないのですが【舌=直筋系の終末】であり、会陰(えいん)からスタートした直筋系は身体の正面で2つに分かれ、以下のような順序で舌へと至ります。
骨盤底筋
↓
腹直筋
↓
横隔膜
↓
胸骨の筋膜
↓
頚部の筋(+胸骨舌骨筋など)
↓
舌
上記の中で【横隔膜(おうかくまく)】は特に呼吸に関与する部位であり、横隔膜は直筋系が体内へ落ち込んで形成されるものと解剖学的には言われています。
よって同じ直筋系に属し、横隔膜の延長にある舌が耳鼻咽喉(あるいは呼吸器)に影響を与えているのも頷けるのでは、と思います。
横隔膜(おうかくまく)の役割について
横隔膜と呼吸の関係性についてピンと来ない方も多いのではないでしょうか?
横隔膜の人体のおける役割は【肺をふくらませること】です。意外に思われる方も多いのでは?と思いますが、実は肺自体にはふくらむ力がないのですね。
詳しいメカニズムについてはここでは省きますが、肺の内部は陰圧(いんあつ)という状態になっており、むしろ縮もうとする性質があります。
そのため、肋骨の底面にある横隔膜が引き下がることによって肋骨内部(胸腔/きょうくう)の圧力が変化し、縮もうとする肺は逆に拡げられ、呼吸運動が成立するというわけです。
横隔膜は焼き肉でいうと【ハラミ】の部分です。焼き肉好きな方におかれましては「”膜”と言いつつも、かなりしっかりとした筋肉」であることがイメージして頂けることでしょう。
余談ですが、呼吸には横隔膜のみではなく肋間筋(ろっかんきん)という肋骨を運動させる筋肉の働きも重要です。胸腔(=肋骨内部)の圧力を変化させて肺をふくらますためには肋骨自体を拡げる必要があるためです。
格闘技などコンタクト系のスポーツをなさっている方がしばしば「肋骨骨折はケガに入らない」と雄弁に語りますが、肋骨を複数に渡って骨折(多発骨折)すると肋間筋が胸腔を拡げる支点を失って呼吸不全に陥るケースがあります(フレイルチェストと言います)。
フレイルチェストは交通外傷など大きな外力が原因になることがほとんどですが、肋骨は呼吸筋の支点となる大切な骨なのです。
舌と呼吸器の関係
このように【舌=直筋系の終末】であり、一続きのものとして関係しあっています。
よって、直筋系に冷えや筋膜の癒着などのトラブルが起こってくると舌が他の直筋系に引き付けられて下がってきます。その結果、気道を狭くし、呼吸に悪影響を及ぼす可能性があります。
舌が下がっていると起こり得るリスクは以下のようなものがあります。
〇気道を狭くしてしまい呼吸力が低下する。
〇同じ直筋系に属する横隔膜の働きが弱まり睡眠時無呼吸症候群になる
〇同じ直筋系に属する骨盤底筋(こつばんていきん)の働きが悪くなり内臓下垂や泌尿系のトラブルを起こす。
舌のパワーと呼吸力を取り戻すためにどうすればよいのだろう!?
また、当サイトでもしばしばご紹介している顎関節のコンディション悪化(噛みしめ/歯ぎしり/そしゃく筋の硬結・癒着)は身体の前面の筋膜の癒着を強めてしまうと言われています。
よってセルフケアをされるのであれば
①そしゃく筋(=顎関節の運動筋)のセルフケア(セルフマッサージ)
②舌を上あごにつけて口を閉じるよう意識する
③そしゃく筋の緊張を強めないように日常的に上下の歯が接触しないように気を付ける
のがよいと考えます。
最後に
つたない説明となりましたが、いかがでしたでしょうか?
このように舌は「直筋系」、「横隔膜」、「噛みしめ」などのキーワードに伴って呼吸や全身の状態に大きな影響を与えていることが伝われば幸いです。
余談ですが、上あごに下をつけて頂いたほうが鼻呼吸がより深く・楽になることも感じて頂けると思います。
今後もこのような健康に関するお役立ち情報を発信させて頂くとともに、わかりづらい点・疑問点などなど、コメント欄より何なりとお寄せいただければと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。