顎関節の運動に関与している部位というのは実に身体のあちこちに存在しており、離れたところだと内ももやすねにも関係している部位があるため見過ごされやすいのです。

また、歯科研究によれば顎関節症で苦悩されている方の大半は上下歯列接触癖（TCH）という行動パタンを持っているとされ、これまでよく言われていた「歯ならび」などはあまり原因としては関係ないことがわかってきています。

そのため顎関節を運動させている筋肉、関節、そして筋膜的に顎関節と関係を持っている部位へのアプローチはもちろんのこと、顎関節に悪影響を与えている可能性がある行動パタンを分析しどう対処すればよいのかについて情報提供を行う必要があります。

蛇足ですがマウスピースは歯ぎしりで歯が磨耗しないように着けるだけの装具なので残念ながら顎関節症を改善してくれる効果は薄いです。

食事のときなど顎関節を動かした時に痛みが出る様になります。
硬いものを無理に食べると発症・悪化の原因になったりするので注意が必要です。

顎関節を動かす筋肉のことを咀嚼筋群（そしゃくきんぐん）と呼びます。
顎関節症ではこれら咀嚼筋群が連携の不具合を起こして負荷がかかってくるため筋硬結や筋膜の癒着に伴う神経痛が発生してくることがあります。

具体的には顎まわりの痛み、首肩のコリ・痛み、頭痛、側頭部痛、眼痛などが起こることがあります。

クリック音とは顎を開閉するときに「カクッ」と鳴る音のことで痛みを伴う場合もあれば特に痛み等なく無症状なケースも多数あります。
しかしながらクリック音は顎関節の不安定性を示唆する兆候であるため、軽視しない方がよいのです。

これは関節円盤（顎関節に存在する関節のクッションの様なもの）の変性によるものが原因で、関節がスムーズに動けない状態になっているために異音が鳴る様になるのです。
顎関節症の分類でいうとⅢ型（タイプ３）に分類される症状です。

顎関節症が悪化すると【痛みはないが口を開けづらくなる】あるいは【口を開けようとすると痛みが走る】といった症状が出ることがあります。
これを開口障害（かいこうしょうがい）と言います。

顎関節症のタイプ分類上では筋痛が伴うⅠ型（タイプ１）以外は特に痛みを伴わないと言われています。
いずれにせよ顎関節の構造異常を示唆する症状なので痛みがないからと言って軽視しないほうがよいでしょう。

顎関節の問題が発生すると筋硬結が片側の顎関節に偏ることによる【顔の歪み】や睡眠時の呼吸が不安定になることによる【睡眠時無呼吸症】など実に様々な悪影響を人体にもたらします。

顎関節症のⅠ型は【咀嚼筋の障害】が原因で起こります。
筋痛やコリ感に伴う開口障害など咀嚼筋の痛みが中心の症状が発生します。

原因は顎関節の使いすぎからくる疲労や歯ぎしり・噛み締め癖など顎関節に慢性的な負荷を生じる癖からくる筋硬結、筋膜の癒着です。

顎関節症のⅡ型は【関節包や靭帯の障害・微細損傷】が原因で炎症が関節包や靭帯に広がってくると起こります。

いわば顎関節の捻挫であり、炎症が関節の構造体に食い込んでいるために顎全体の筋痛というより顎関節自体の痛みを伴います。

原因は【無理に硬いものを食べている】【顎関節の可動域異常に無理に口を大きく開けている】など顎関節自体に負荷をかけていることです。

顎関節症のⅢ型は【関節円盤の障害】が原因で起こります。

顎関節自体の痛みのみならず、クリック音などの異常が発生してくることも特徴です。

原因は【歯ぎしりや噛み締め癖】【頬杖】【腕を枕にしたうつ伏せ寝】など【不正咬合】と呼ばれる上顎と下顎の対立運動の悪化によるものです。

なお、Ⅲ型の開口障害については痛みが出ないケースがほとんどです。

顎関節症のⅣ型は【顎関節そのものの変形】によって起こります（変形性顎関節症）。
原因としてはⅢ型が悪化した時に起こりやすいと言われています。

関節円盤に穴が開いてしまうこともあり、「バリバリ」「ジャリジャリ」といった異音を伴うことがあります。
この異音のことを【クレピタス（または捻髪音）】といい、髪の毛の束を捻ったときの様な音をイメージして頂くとわかりやすいかもしれません。

Ⅳ型も痛みを伴わない開口障害が起こりますが、関節のダメージとしてはⅢ型よりも高度ですのでより注意が必要です。

顎関節症のⅤ型は【心因性】によって起こると言われており、上述のⅠ型〜Ⅳ型のいずれにも分類されなかった場合にⅤ型に分類されます。

原因は主にストレスで顎関節の症状以外にも心身症といって全身の不調を訴えるケースもあります。

そのため当院では以下のポイントを大切にしています。

• 顎関節に負荷を与えている原因を【筋膜】【行動パタン】【メンタル】の３つから検証・特定すること。
• 顎関節自体の運動をスムーズにすること。
• 顎関節の運動を妨げている原因を全身から除外すること。
• 「正しい口の閉じ方」をはじめとした顎関節に問題を起こす原因についての対処法を含む情報提供を行うこと。

当院でよくある事例が「奥歯が痛かったから親知らずかと思ったら顎関節の問題だった！」というケースなのですが、顎関節とは無関係な問題だと思っていたことが実は顎関節が原因だったなんてことが結構あります。

また、顎関節に問題が起こると身体の前面にある筋膜が異常を起こすため、全身のバランスが崩れたり、脚にまで問題が波及したりと実に複雑かつ大きな影響が出るのもまた顎関節なのです。

自然界では口の中を怪我した動物は死んでしまうと言われていますが「噛むこと＝生きること」であり、そのことからも顎関節が正常に動作していないことがいかに良くないことなのかがわかっていただけると思います。

顎関節症でお困りの方や上記の内容に何か思い当たることがある方はぜひご相談ください！